No.086 「HERMÈS」 伝統と革新が躍動する職人技

静止画が物語を紡ぎ出す、至高のキャンバス

「HERMÈS(エルメス)」の公式サイトを開いた瞬間、まるで時間の流れが少しだけゆっくりになるような感覚に包まれる。そこに広がるのは、180年以上にわたって受け継がれてきた職人たちの魂と、現代のデジタル技術が見事に融合した世界。色彩と情熱が複雑に、そして軽やかに編み込まれたその空間は、単なるブランドサイトではなく、まるで一冊のアートブックをめくるような体験を与えてくれる。どの商品も、まるで芸術作品のように美しく、ひとつひとつが語りかけてくる。バッグ、スカーフ、ジュエリー、香水──どれを見ても、そこには“憧れ”という言葉しか浮かばない。それは、ただの高級品ではなく、職人の手と心が生み出した“生きた作品”だからだ。
エルメスのサイトは、そんなブランドの哲学を、静止画と余白、そして光の演出によって見事に翻訳している。
ページをスクロールするたびに、まるでパリのアトリエの空気がふっと香るような、上質な時間が流れていく。

ユーザーインターフェース|不規則が生む、高揚感

エルメスのUI(ユーザーインターフェース)は、一般的な「整列されたWebの常識」を軽やかに飛び越えている。
整然としたグリッドをあえて崩し、重なり合う写真や、余白に放り出されたような文字が、まるで自由に踊るように配置されている。スクロールに合わせてふわりと動くアニメーションは、まるでシルクのスカーフが風に揺れるような優雅さを感じさせる。その不規則さは決して混乱を生まない。むしろ、見る人の感性を刺激し、心を高揚させる。
まるで大判のファッション誌を自由にめくっているような感覚で、ユーザーは“買い物”ではなく“散策”を楽しむ。
このUIは、効率的な導線設計を超えた“体験のデザイン”であり、ブランドの世界観をそのまま体感させる仕掛けになっている。一つひとつの動きが、まるで職人の手の動作のように丁寧で、無駄がない。
その繊細なリズムが、エルメスというブランドの呼吸そのものを感じさせる。

コンテンツ構成|職人の手仕事と、現代のユーモア

エルメスのサイトが特別なのは、伝統的な高級感を保ちながらも、常に“遊び心”を忘れない点にある。
製品のディテールを美しく見せるマクロ写真の隣には、ウィットに富んだイラストや軽やかな動画が並び、
「静」と「動」、「伝統」と「ユーモア」が絶妙なバランスで共存している。たとえば、バッグのステッチを映し出す映像の後に、軽やかに跳ねる馬のアニメーションが現れる。その瞬間、ブランドの格式が一気に“親しみ”へと変わる。この構成は、エルメスが単なるラグジュアリーブランドではなく、“日常に寄り添う芸術”であることを静かに語っている。また、コンテンツの流れには“物語”がある。製品を紹介するだけでなく、その背景にある職人の哲学や、素材への敬意、そしてユーモアまでもが丁寧に織り込まれている。それは、まるで一つの詩を読むような体験であり、見る人の心に“憧れ”という余韻を残す。

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デザイン|色の魔術師たち

エルメスのデザインを語る上で欠かせないのが、象徴的な「エルメスオレンジ」だ。この色は、単なるブランドカラーではなく、情熱と誇りの象徴である。
しかし、サイト全体を見渡すと、そのオレンジは決して主張しすぎず、むしろ他の色を引き立てるように配置されている。深みのあるブラウン、気品あるオフホワイト、そして繊細なグレーの階調が、まるで絵画のように調和している。さらに注目すべきは、写真の切り取り方と“縁”の美しさ。背景の白と被写体の境界線がこれほどまでに気高く見えるサイトは他にない。フォントのカーニング、マージンの一ピクセルに至るまで、まさに“職人の手仕事”がWeb上でも完遂されている。まるで革の香りが漂ってくるような、そんな錯覚すら覚えるほどだ。

ターゲット|「本物」を知り、その遊び心を楽しめる自由人

エルメスのサイトが語りかけるのは、単なる富裕層ではない。それは、伝統を重んじながらも、常に新しい価値観を面白がる“自由な精神”を持つ人々。職人が込めた「目に見えないこだわり」を感じ取ることができる審美眼を持ち、そして、画面越しの体験であっても“上質な時間”を大切にする大人たち。
「本物を知るあなたへ、遊び心を忘れないで」と。そのメッセージは、どの商品ページにも、どの写真にも、確かに息づいている。どの商品も美しく、どの瞬間も魅力的で、見ているだけで心が満たされていく。
それは、単なる“欲しい”ではなく、“憧れ”という感情そのもの。
エルメスのサイトは、その憧れを丁寧に育てる場所なのだ。

「ここを真似したい!」ポイント!

  • グリッドをあえて崩すことで生まれる、紙媒体のような「リズム」と「驚き」
  • 余白を「空いている場所」ではなく「物語の一部」として定義する贅沢な設計
  • 高級ブランドの品格を損なわず、むしろ高めるための「ユーモア」の取り入れ方
  • スクロールという動作を、ページをめくる以上の「体験」に変える演出力
  • 静止画と動画を融合させ、ブランドの“呼吸”を感じさせる構成力

まとめ|デザインとは、ブランドの「魂」を翻訳する

エルメスのWebサイトを眺めていると、デザインの本質とは「情報を整理すること」ではなく、「ブランドの心臓の鼓動を伝えること」なのだと再確認させられる。どの商品も美しく、どのページも完璧で、見るたびに新しい発見がある。それは、職人の手仕事がデジタルの中で再び息を吹き返しているからだ。このサイトは、伝統と革新、静と動、そして理性と情熱が見事に共存する“至高のキャンバス”。
エルメスというブランドが持つ“永遠の憧れ”を、Webという舞台で見事に表現している。
それは、エルメスが放つ“美の余韻”であり、デザインという名の芸術の証だ。

項目内容
サイト名エルメス (Hermès)
URLhttps://www.hermes.com/jp/ja/
メインカラーエルメスオレンジ、深みのあるブラウン、
気品あるオフホワイト
デザイン傾向エディトリアル、ラグジュアリー、アーティスティック
注目UI自由なグリッドレイアウトと、
シームレスな動画遷移

トーストの地平線|Webサイト100選