No.056 「不二家」 甘さの記憶、永遠のレトロモダン

ショーケースの中で輝くケーキの断面。
子どものころ、誕生日のたびに胸を高鳴らせたあの光景。
不二家のブランドサイトは、ページを開いた瞬間に幼い日の高揚感を呼び覚ます、魔法の空間。整然と並ぶケーキの一枚一枚が、家族の記念日や自分へのご褒美を祝福する舞台装置。そんな“甘い記憶”をそのままデジタルに閉じ込めた世界。ページを開くと、ペコちゃんの微笑みとともに、色とりどりのケーキが並ぶ。懐かしさと新しさが同居する、レトロモダンなデザイン。時代を超えて愛されるブランドの、やさしい物語。

ユーザーインターフェース|ショーケースを覗き込む、あの日の高揚感

トップページは、明るいホワイトを基調に、カラフルなケーキ写真が整然と並ぶ構成。
ナビゲーションは上部に固定され、「ケーキブランド」「商品情報」「店舗検索」「キャンペーン」などが明快に配置。スクロールに合わせて写真が軽やかに切り替わり、まるでショーケースを覗くような感覚。
まるでケーキ屋さんのショーケースの前に立った時のような、視線の動きを再現したレイアウト。大きなビジュアルと、それらを支える丸みのあるボタン。スクロールするたびに現れる色鮮やかなスイーツは、選ぶ楽しさを最大化する設計。No.053(恵文社)の「知的な散策」とは対照的な、本能に訴えかける直感的な導線。迷うことさえ愉しみ、というUIの贅沢。

コンテンツ構成|「旬」と「伝統」が交差する、幸せのアーカイブ

サイトは「ケーキブランド」「商品情報」「キャンペーン」「お知らせ」で構成。
「ケーキブランド」では、季節限定や定番ケーキを美しい写真とともに紹介。それぞれのケーキに込められたストーリーや素材のこだわりが、短いテキストで添えられる。「キャンペーン」では、ペコちゃんを中心としたキャラクター展開が楽しく、ブランドの親しみやすさを強調。
全体を通して、視覚と感情の両方で“おいしさ”を伝える構成。
季節限定のフルーツが躍る「旬」のページと、長年愛されてきた「定番」の重み。一見、情報の波に見える構成も、実は「今食べたいもの」へ最短距離で辿り着かせる緻密な分類。どのケーキを載せるかを想像させる高い解像度の写真。情報の整理とは、単なる分類ではなく、受け手の「期待感」を整えることだと教えてくれる。

デザイン|赤と白が紡ぐ、普遍のブランドアイデンティティ

不二家を象徴する「赤」の力強さと、生クリームを思わせる「白」の清潔感。そこに添えられるのは、フルーツの瑞々しい色彩。画面全体に“お菓子の空気”が漂う。デジタルでありながら、ショーケースの前に立つような臨場感。
フォントは視認性を重視しつつ、丸みのあるサンセリフ体で、親しみやすく温かい印象。写真は明るく、ケーキの質感や光沢を丁寧に描写。素材の質感やクリームの柔らかさまでをも伝え、見る者の味覚を刺激する。時代に媚びない、しかし古びない。これこそが、日本の「おやつ文化」を支えてきた王道のデザイン。

ターゲット|日常に小さな「祝祭」を求める、すべての人へ

子どものころからペコちゃんに親しんできた世代。
家族の記念日を大切にし、ケーキを通して思い出を紡ぐ人々。
また、レトロなデザインや昭和カルチャーに惹かれる若い層。
“かわいい”と“おいしい”を同時に楽しみたい感性豊かな生活者。

特別な日だけでなく、何でもない一日を「少しだけ良い日」に変えたいと願う生活者。No.055で身体を温め、次に心の栄養を求める人々。デザインの洗練さよりも、そこに宿る「安心感」と「裏切らない美味しさ」に価値を感じる、全世代。

「ここを真似したい!」ポイント!

『王道』を退屈させない、シズル感のコントロール
誰もが知る定番商品を、古臭く見せず、常に「今が一番美味しい」と感じさせるビジュアル戦略。シズル感(美味しそうな質感)を最優先にしつつ、ブランドの安心感を損なわない絶妙なバランス。情報を詰め込みすぎず、まずは「食べたい」という感情を動かす。Webデザインにおける「動機づけ」の教科書。キャラクターを自然に溶け込ませたUI構成と、情報を整理しながらも“楽しさ”を失わない編集。

まとめ|甘さの中にある、永遠のやさしさ

不二家のサイトを巡る体験は、心の奥に眠る「嬉しい記憶」を呼び起こす、ポジティブな再定義。デザインとは、知識を与えることではなく、見た人を笑顔にすること。懐かしさと新しさが混ざり合い、甘く、優しい香りに包まれている。不二家の公式サイトは、ブランドの歴史と温もりをデザインで語る作品。
デザインとは、味を伝えることではなく、記憶を呼び覚ますための装置。
ページを閉じたあとに残るのは、ケーキの香りと、幼い日の笑顔。

項目内容
サイト名不二家(ケーキ・洋菓子ブランドサイト)
URLhttps://www.fujiya-peko.co.jp/cakebrand/
メインカラーレッド、ミルキーホワイト、フルーツカラー
デザイン傾向ポップ・コンテンポラリー、王道・マスデザイン、シズル重視
注目UIシズル感を強調したヒーロービジュアル、直感的なカテゴリー検索、ギフト需要を意識した導線

トーストの地平線|Webサイト100選